遺言書の種類と、見つかったときの対応 ─ あわてず、正しく進めるために

■ はじめに

「遺言書が出てきた」

亡くなった方の部屋を片付けているときや、
ご家族から「遺言書があるらしい」と聞いたとき、
どうすればいいか迷いますよね。

実は、遺言書は種類によって、
見つかったあとの対応がまったく異なります。

すぐに開けていいものもあれば、
開封してはいけないものもある。

このページでは、
遺言書の種類ごとに、
見つかったときの正しい対応をまとめました。

■ 遺言書には、おもに3つの種類があります

(1)公正証書遺言
(2)自筆証書遺言(自分で保管していたもの)
(3)自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用したもの)

それぞれ、つくり方も保管場所も、
見つかったあとの手続きも違います。

ひとつずつ説明していきます。

■ (1)公正証書遺言

【どんな遺言書?】
公証役場で、公証人が作成した遺言書です。

遺言者が口頭で内容を伝え、
公証人がそれを文書にまとめます。
証人が2人立ち会い、
原本は公証役場に保管されます。

【見た目の特徴】
多くの場合、表紙に
「遺言公正証書」という表示がついており、
公証役場の名称や公証人の記名があるため、
公正証書であることがわかるようになっています。

【見つかったときの対応】
公正証書遺言は、
そのまま相続手続きに使えます。

家庭裁判所の「検認」は不要です。

手元にあるのは「正本」や「謄本」と表記されていますが、この2種類に優劣はありません。
また、万が一なくしてしまっても、
原本が公証役場に保管されているので、
再発行を請求することができます。

【遺言書があるかわからない場合】
亡くなった方が公正証書遺言を
作成していたかどうかは、
全国の公証役場で検索できます。

「遺言検索システム」といいます。

相続人であれば、
最寄りの公証役場の窓口で
検索を依頼できます。

亡くなった方の死亡の記載がある戸籍と、
ご自身が相続人であることがわかる戸籍を
持参してください。

■ (2)自筆証書遺言(自分で保管していたもの)

【どんな遺言書?】
亡くなった方がご自身の手で書いた遺言書です。

「遺言書」という題名がなくても、
財産の分け方や相続人への指示など、
内容から遺言の意思が読み取れるものであれば、
遺言書として扱われます。

【見た目の特徴】
ご本人が手書きで全文を書いたものです。
封筒に入れてあることもあれば、
そのまま置いてあることもあります。

用紙も便箋やコピー用紙、ノートなど、
ご本人によってさまざまです。

自宅の金庫や引き出し、
大切な書類の中から出てくることが多いです。

【見つかったときの対応】

自筆証書遺言が見つかったら、
できればそのままの状態で保管してください。
見つけた人または保管を任されていた人が家庭裁判所に申出をして、
「検認」という手続きを
受ける必要があります。

検認とは、
家庭裁判所が遺言書の状態を確認し、
記録に残す手続きです。

【もし開封してしまっても、心配しないでください】

「知らずにうっかり開けてしまった」
ということは、実はよくあります。

開封してしまっても、
遺言書が無効になるわけではありません。

亡くなった方の意思は、
ちゃんと尊重されます。

開封してしまった場合でも、
そのまま家庭裁判所に持参して、
検認の手続きを進めてください。

大切なのは、
そのあとの対応を正しく行うことです。
開けてしまったことで
慌てたり、隠したりする必要はありません。

ただし、だからといって
「開けてもいい」というわけではありません。
他の相続人との無用なトラブルを避けるためにも、
見つけたときはそのままの状態で
保管しておくのが原則です。

自筆証書遺言の検認手続きの詳しい流れは、
別のページでご案内します。

→ 自筆証書遺言の検認手続き(近日公開)

■ (3)自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用したもの)

【どんな制度?】
2020年7月から始まった制度で、
自筆証書遺言を法務局に預けておくことができます。

「遺言書保管制度」と呼ばれています。

生前にご本人が法務局に出向いて、
遺言書を預けておく仕組みです。

【見た目の特徴】
遺言書そのものは法務局に保管されているため、
手元にはありません。

かわりに、「保管証」が残されていることがあります。
保管証には、遺言者の氏名、生年月日、
遺言書保管所(法務局)の名称、
保管番号が記載されています。

この保管証が見つかったら、
法務局に遺言書が預けられている証拠です。

【この制度を利用している場合の対応】

法務局に保管された遺言書は、
家庭裁判所の検認が不要です。

自筆証書遺言でありながら、
公正証書遺言と同じように、
そのまま手続きに使えます。

【遺言書が保管されているか確認する方法】

亡くなった方が
この制度を利用していたかどうかは、
法務局で確認できます。

「遺言書保管事実証明書」の交付を請求すると、
遺言書が保管されているかどうかがわかります。

この請求は、相続人であれば
全国どこの法務局でも行えます。

必要なもの:
・交付請求書(法務局の書式)
・亡くなった方の死亡の記載がある戸籍謄本
・請求者の戸籍謄本(相続人であることの証明)
・請求者の住民票
・手数料800円(収入印紙)

【遺言書の内容を確認する方法】

保管されていることがわかったら、
「遺言書情報証明書」の交付を請求します。

これにより遺言書の内容を確認でき、
この証明書を使って
相続登記や預貯金の解約などの
手続きを進めることができます。

なお、相続人のひとりが
遺言書情報証明書の交付を受けると、
法務局から他の相続人全員に
遺言書が保管されている旨の通知が届きます。

■ 遺言書が見つからない場合

自宅を探しても見つからない、
ご家族も聞いていない。

そんなときは、
以下の方法で確認してみてください。

【1. 公証役場の遺言検索】
公正証書遺言があるかどうかを
全国の公証役場で検索できます。

【2. 法務局の保管制度の確認】
遺言書保管事実証明書を請求して、
法務局に預けられていないか確認できます。

【3. 銀行の貸金庫】
亡くなった方が銀行の貸金庫を
利用していた場合、
遺言書や保管証などの大切な書類を
貸金庫に入れていることがあります。

公正証書遺言の正本や、
法務局の保管証が
貸金庫に保管されているケースもあります。

ただし、貸金庫の開扉には
原則として相続人全員の立ち会いか、
全員の同意書が必要です。

すぐに中身を確認できるわけではないので、
まずは金融機関に連絡して、
手続きの進め方を確認してください。

この3つを調べても見つからなければ、
遺言書は作成されていなかった可能性が高いです。

■ 遺言書がない場合

遺言書がない場合は、
相続人全員で話し合って、
誰が何を相続するかを決めます。

この話し合いの結果をまとめたものが
「遺産分割協議書」です。

遺産分割協議書は、
不動産の登記や預貯金の解約など、
あらゆる相続手続きで必要になります。

→ 遺産分割協議のポイント(近日公開)

その場合は、
相続人全員で遺産分割協議を行い、
誰が何を相続するかを話し合って決めることになります。

■ 遺言書が見つかったけれど、内容に納得できない場合

遺言書が出てきたけれど、
「この内容では困る」ということもあります。

相続人全員が合意すれば、
遺言書と異なる分け方をすることも可能です。

また、一定の相続人には
「遺留分」という最低限の取り分が
法律で保障されています。

遺言書の内容が
遺留分を侵害している場合は、
「遺留分侵害額請求」ができます。

遺言書の内容に疑問がある場合は、
まずは司法書士にご相談ください。

■ まとめ

遺言書の種類ごとの対応を整理すると:

・公正証書遺言 → そのまま使える。検認不要。
・自筆証書遺言(自分で保管)→ 開封せず、家庭裁判所で検認。
・自筆証書遺言(法務局保管)→ 検認不要。法務局で証明書を請求。

いちばん大切なのは、
自筆証書遺言を見つけたら、
できればそのまま保管しておくこと。

もし開けてしまっても大丈夫です。
遺言書は無効にはなりません。
落ち着いて、次の手続きに進んでください。

「どの種類かわからない」
「見つけたけれど、どうすればいいかわからない」

そんなときは、どうぞご相談ください。
状況に合わせて、
いちばん良い進め方をご案内いたします。

翔栄法務司法書士事務所
TEL:03-5452-0885

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