高齢になった母親が認知症になってしまったら
高齢になった母親が認知症になってしまったらと、家族としては将来のことが心配になります。特に、相続については早めに対策を講じることが重要です。ここでは、母親が認知症が始まる前に今できる相続対策について考えてみましょう。
現状の確認と家族の意向を尊重する
母親は80歳を超えており、軽度の認知症の兆候がありますが、まだ認知症と診断されるほどではありません。財産としては、預金、株式、自宅、そして軽井沢の別荘があります。家族構成は、父親が他界しているため、母親と3人の兄弟(そのうち長男は他界しており、その子供が二人います)が相続人となります。母親は一番下の弟を心配しており、自宅は彼に受け継がせたいとの意向があります。
遺言書の作成
母親の意向を正式な形にするために、まずは遺言書を作成することが重要です。遺言書には本人の意向のポイントを明確に記載します。
1.自宅は同居している一番下の弟に相続させる。
2.軽井沢の別荘はあなた(筆者)に相続させる。
3.預貯金と株式はあなたと弟で分割相続する。**
遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、そして法務局保管制度の三つの主要な形式
それぞれの特徴は以下の通りです。
1. 自筆証書遺言
自分で手書きする遺言書で、費用がかからず自由に書ける一方、法的に無効となるリスクがあります。相続開始後に家庭裁判所での検認が必要です。
2. 公正証書遺言
公証人が関与するため、法的に確実であり、家庭裁判所での検認も不要です。費用がかかりますが、争いが生じるリスクが低いです。
3. 法務局保管制度
自分で書いた遺言書を法務局に預ける方法です。遺言書の内容が明確になり、偽造や紛失のリスクが低く、家庭裁判所での検認も不要です。利用には手数料がかかりますが、自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的な選択肢として有効です。
財産管理の準備
母親の認知症が進行する前に、財産管理についても準備をしておくことが大切です。具体的には以下の方法があります。
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任意後見制度の利用
母親が信頼する人物を任意後見人として指定し、財産管理を行う。
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家族信託の活用
母親の財産を信託により管理し、母親の意思を尊重しながら財産を適切に運用する。
甥と姪に対する遺留分
甥や姪にも遺留分があります。遺留分とは、法定相続人が最低限受け取ることができる財産の割合を指します。具体的には、長男が他界しているため、その子供である甥と姪が代襲相続人として法定相続人になります。法定相続人には、以下の遺留分があります。
兄弟姉妹の場合
相続財産の1/2。
長男がすでに他界しているため、その子供である甥と姪が相続人となり、母親の相続財産に対する遺留分は1/2(この事例では、本来なら長男が相続する持分1/3の1/2である1/6を二人で分けるのでそれぞれ1/12づつとなります。)
遺留分を考慮しない遺言を作成した場合、甥や姪から遺留分減殺請求を受ける可能性があります。これを避けるためにも、事前にしっかりとした遺言書を作成し、母親の意向を明確にしておくことが重要です。
家族との話し合い
相続に関する母親の意向を尊重するためにも、家族全員で話し合いを行うことが重要です。特に疎遠になっている長男の子供たち(甥や姪)に対しても、母親の意向を説明し、理解を得る努力が必要です。家族全員が納得できる形での相続を目指しましょう。
まとめ
母親の認知症が進行する前に、以下の対策を講じることが重要です。
1. 遺言書の作成
母親の意向を正式な形にする。自筆証書遺言、公正証書遺言、法務局保管制度から適切な方法を選ぶ。
2. 財産管理の準備
任意後見制度や家族信託を活用する。
3. 甥と姪の遺留分を考慮する
遺留分を考慮した遺言書を作成する。
4. 家族との話し合い
全員の理解を得て、円満な相続を目指す。
母親のために最善の対策を講じることで、家族全員が安心して未来を迎えることができます。専門家のアドバイスを活用し、適切な相続対策を進めましょう