数年前のことでした、知り合いのお母様からの相談がありました。まだご健在ではありましたが、高齢になったこともあり、もしものときには不動産は次男に譲りたい。実は、戦後お金には本当に苦労してきた。
負けたくないという気持ちもあって、堅実に節約して、どうにか不動産をいくつか所有できるまでになった。しかし、裕福に育った子どもたちには親の苦労はまったく伝わっていない。
特に長男は働かず、また三男は結婚したら妻の言いなりで親のところに来るときにはお金の無心の時だけ。
頼りになるのは次男ひとり。自分たち名義の不動産もしっかりと修繕や管理も引き受けてくれるし親の面倒もよく見てくれる。
これからの厳しい時代を生き抜くためにも親の財産を当てにはしてほしくない。次男にすべてを任せたい。そのために遺言書を作っておきたい。
意向は全部次男に相続させるということ。
病院に公証人をきてもらって、私達が立会人となり公正証書ができあがりました。病室に行けば、何時間とお話がつづく。公正証書の遺言書とは別に、子どもたちへの手紙も作成しておいた。
もちろんこれは、次男が親に作らせたのだと言われないということもあるが、お母様が直接お話になる機会がなさすぎて、私だけが聞いた話に終わらせるのはもったいないと思ったからです。
最近、そのお母様の訃報が届きました。その後兄弟での話し合いが紛糾するのは想像できましたが、なによりも遺言書があったおかげで、無理な主張は諦めて、円満に遺産分割協議の話し合いができました。
お母様の強い思い、通じたことで遺言書は裏切らないということを実感した事例でした。