遺言書 不動産の書き方

遺言書に不動産を書くとき、「自宅を長男に」と書けばよいと思っていませんか?

気持ちは伝わるかもしれませんが、それだけでは相続の手続きが進められないことがあります。不動産は、法務局の登記情報にもとづいて正確に記載する必要があります。

このページでは、遺言書に不動産を書くときのルールと、間違いやすいポイントをまとめました。


住所と地番は違います

まず知っておいていただきたいのが、普段使っている「住所」と、登記上の「地番」は別のものだということです。

たとえば、住所が「世田谷区北沢4丁目26-1」であっても、登記上の地番は「北沢四丁目26番1」というように表記が異なります。遺言書には登記上の「所在」と「地番」で書く必要があります。住所で書いてしまうと、不動産を特定できず、手続きが進まないことがあります。


土地の書き方

土地は「所在」と「地番」で特定します。

【記載例】
所在 東京都世田谷区北沢四丁目
地番 26番1

地番が複数ある場合(例:26番1と26番2)は、それぞれ記載してください。


建物の書き方

建物は「所在」と「家屋番号」で特定します。

【記載例】
所在 東京都世田谷区北沢四丁目26番地1
家屋番号 26番1

建物の場合、所在に「番地」がつくのがポイントです。土地は「番」、建物は「番地」と表記が異なります。


マンションの場合

マンション(区分所有建物)は、一戸建てとは書き方が異なります。「一棟の建物の表示」と「専有部分の建物の表示」の両方を記載する必要があります。

【記載例】
一棟の建物の表示
所在 東京都世田谷区北沢四丁目26番地1
建物の名称 ○○マンション

専有部分の建物の表示
家屋番号 北沢四丁目26番1の301
建物の名称 301

マンションの場合は記載が複雑になりますので、権利証または登記事項証明書をそのまま書き写すのがいちばん確実です。


書き漏れに注意──記載されていない不動産は相続できません

遺言書に不動産を書くとき、いちばん気をつけていただきたいのが書き漏れです。遺言書に記載されていない不動産は、遺言どおりに相続することができません。その不動産だけ別途、相続人全員での遙産分割協議が必要になります。

実際に、亡くなったあとに「遺言書に書かれていない土地が見つかった」と相続人の方が困ってしまうケースは珍しくありません。せっかく遺言書を残したのに、書き漏れが原因で相続人が苦労することになっては本末転倒です。

見落としやすい不動産

  • 私道の持分 ── 自宅前の道路が私道で、近隣の方と共有している場合があります
  • 近隣の土地 ── 自宅の隣に小さな土地を持っている場合があります(駐車場、菜園など)
  • 敷地権のない古いマンション ── 土地と建物が別々に登記されていることがあり、建物だけ書いて土地が漏れることがあります
  • 貸地や遠方の土地 ── 自宅以外に所有している不動産を忘れてしまうことがあります

所有している不動産をすべて把握する方法

書き漏れを防ぐために、次の3つの方法で確認しましょう。

1. 権利証(登記済証)または登記識別情報通知を確認する

「不動産の表示」の欄に所在・地番・家屋番号が書いてあります。まずはこれを見るのがいちばん確実です。

2. 固定資産税の納税通知書・評価証明書を確認する

毎年届く納税通知書に、課税対象の不動産が一覧で載っています。また、役所(資産税課)で評価証明書を取得すれば、地番や家屋番号が正確に確認できます。

ただし、納税通知書だけでは不十分な場合があります。注意していただきたいのは次の2点です。

  • 非課税の不動産は納税通知書に載りません ── 私道など固定資産税がかからない不動産は、そもそも通知書に記載されません。持っていること自体を忘れてしまいがちです
  • 共有名義の不動産は、代表者にしか届かないことがあります ── ご夫婦やご兄弟で共有している不動産の場合、納税通知書が共有者の代表者にだけ届くため、ご自身の手元にない場合があります

こうした理由から、納税通知書の確認だけで安心せず、次の名寄帳の取り寄せもあわせて行うことをおすすめします。

3. 名寄帳(なよせちょう)を取り寄せる

名寄帳とは、その市区町村内で本人が所有する不動産をすべて一覧にした台帳です。納税通知書には載らない非課税の不動産(私道など)も記載されるため、書き漏れ防止にとても有効です。

取得方法は、不動産のある市区町村の役所(資産税課や税務課)の窓口で申請します。本人確認書類(運転免許証など)を持参してください。手数料は数百円程度です。複数の市区町村に不動産をお持ちの場合は、それぞれの役所で取得する必要があります。

この3つを突き合わせれば、所有している不動産の全体像が把握できます。面倒に感じるかもしれませんが、ここを丁寧にやっておくことで、残されたご家族が困ることを防げます。


「すべての財産を○○に」と書く方法もあります

不動産を個別に書くのが不安な場合は、「遺言者の有する一切の財産を、妻○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。」と書く方法もあります。

この書き方であれば、不動産の記載漏れを防ぐことができます。ただし、複数の相続人にそれぞれ違う財産を分けたい場合には、個別に書く必要があります。


不安なときは

不動産の書き方は、遺言書の中でもいちばん間違いが起きやすい部分です。「書いてみたけれど合っているか不安」という方は、遺言書の無料添削をご利用ください。書きかけの状態でも構いません。

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翔栄法務司法書士事務所 司法書士 山内扶美子

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