自筆の遺言書を自宅で保管する場合の書き方と注意点

山内扶美子
監修者 山内扶美子

自筆の遺言書を自宅で保管する場合の書き方と注意点

遺言書には、ご自分で書いて自宅で保管する方法と、ご自分で書いて法務局に預ける方法があります。この記事は、前者――ご自分で書いて自宅で保管する方法のご案内です。思い立った日に、すぐ書いておきたい方、近くに公証役場や法務局がない方に向いています。

より確実に保管して紛失や改ざんを防ぎたい方、亡くなったあとのご家族の手間(検認)を省きたい方は、法務局に預ける方法もあります。その場合は、別の記事「自筆の遺言書の書き方と、法務局への預け方」をご覧ください。

「公証役場も法務局も遠くて、なかなか足を運べない」「思い立った今のうちに、とにかく書いておきたい」――そうした方にとって、自分で書いて自宅で保管する遺言書(自筆証書遺言)は、いちばん身近で、今日すぐに始められる方法です。予約も、外出も、費用もかかりません。

この記事では、自宅で保管する場合の書き方と、気をつけていただきたい点を、司法書士の立場からご説明します。手軽な方法ですが、あとでご家族が困らないために知っておきたいこともありますので、あわせてお伝えします。

自宅保管のよいところ

なんといっても、思い立ったその日に、ご自分の手元だけで書けることです。法務局の予約も、公証役場とのやり取りもいりません。紙とペンと印鑑があれば、今日すぐに遺すことができます。遠方にお住まいの方や、お急ぎの事情がある方には、いちばん現実的な方法です。

書き方 ― ここは保管方法を問わず同じです

自宅で保管する場合も、遺言として有効であるための基本のルールは同じです。

本文――誰に、何を、どう遺すか――と、日付、お名前は、すべてご自分の手で書きます。そして最後に印鑑を押します。本文・日付・氏名・押印。この四つが土台です。

間違えやすい点が二つあります。日付は「令和七年六月吉日」のような書き方では認められません。何年何月何日まで、はっきり書いてください。印鑑は認印でかまいませんが、インクが内蔵されたスタンプ印(いわゆるシヤチハタ)は避けてください。

筆記具は、ボールペンや万年筆など、消えないものを使ってください。鉛筆や、こすると消えるボールペンは避けます。あとから書き換えられたり、文字が薄れて読めなくなったりすると、せっかくの遺言が台無しになってしまうからです。

財産がたくさんあって一覧表(財産目録)を付ける場合は、その目録はパソコンで作っても、通帳や不動産の書類のコピーを添えてもかまいません。ただし、目録のすべてのページに、ご自分で署名し、押印してください。ここは自宅保管でも同じです。

ここで一つ、気をつけたい点があります。登記事項証明書のように、もともと複数枚がホチキスで綴じられて発行される書類があります。「綴じてあって割印(契印)も押されているのだから、まとめて一回署名すれば足りるのでは」と思いたくなりますが、そうはいきません。法律は、財産目録の一枚一枚に署名と押印を求めています。ホチキス止めや割印では、各ページの署名・押印の代わりにはならないのです。少し手間に思えても、綴じを外すか、コピーを取って、一枚ずつ署名・押印してください。

自宅で保管する場合の本文の見本(全財産を一人に遺す例)
財産目録(パソコンで作る場合)
財産目録(通帳のコピー・預貯金)
財産目録(登記事項証明書のコピー・不動産)

法務局に預ける場合との違い ― 用紙や様式は自由です

「A4サイズの紙に、決まった余白を空けて、ページ番号を振って、ホチキスで綴じない」――こうした細かい決まりを耳にされた方もいるかもしれません。これは法務局に預けるとき(保管制度)のための様式で、自宅で保管する場合には必要ありません。

ですから、用紙の大きさは自由ですし、縦書きでもかまいません。複数枚にわたってもよく、何枚かをとじておいても有効です(とじ目に印を押す「契印」は必須ではありませんが、ひとまとまりの遺言だと分かるようにしておくと安心です)。

自宅で保管するときの注意

手軽さの裏返しで、自宅保管には弱点もあります。正直にお伝えしておきます。

いちばんの心配は、保管場所です。しまい込みすぎて、亡くなったあとにご家族が見つけられない。あるいは、誰かに見つかって書き換えられたり、捨てられたりする。こうしたことが起こり得ます。信頼できる場所に保管し、「遺言書が、どこそこにある」ということだけは、信頼するご家族に伝えておくことを強くおすすめします。

封をするかどうかは自由です。ただし、封筒に入れて封じ目に印を押した場合は、見つけたご家族が勝手に開けてはいけません。あとで述べる家庭裁判所の手続き(検認)のときに開封します。うっかり開けてしまうと、過料という金銭の負担を求められることがありますので、ご注意ください。

亡くなったあとのこと ― 家庭裁判所の「検認」が必要です

自宅で保管した自筆の遺言書は、亡くなったあと、そのままでは銀行や登記の手続きに使えません。まず、ご家族が家庭裁判所で「検認」という手続きをする必要があります。

検認とは、家庭裁判所から相続人に連絡が行き、立ち会いのもとで遺言書を開いて、その時点の状態と内容を確認し、記録しておく手続きです。あとで「書き換えられた」ともめないための手続きで、遺言が有効かどうかを判断するものではありません。申立てから終わるまで、一か月ほどかかります。

この検認は、自宅保管の自筆遺言につきものの手間です。法務局に預けた場合や、公正証書遺言の場合には不要になります。

書き直すときは ― 新しい日付のものが優先されます

遺言は、いつでも書き直せます。そして、自宅保管でも、法務局保管でも、公正証書でも、いちばん新しい日付の遺言が優先されます。

気持ちが変わったり、内容を改めたりしたときは、新しく作り直してください。そのとき、古い遺言が残っていると、ご家族が「どちらが本当の遺言か」と迷うもとになります。新しい遺言に「以前の遺言は撤回する」と書き添えるか、古いものはきちんと処分しておきましょう。自宅保管はとくに、古い紙が家のどこかに残りやすいので、ご注意ください。日付を正確に書いていただきたいのも、どれが最新かをはっきりさせるためです。

落ち着いたら、より確実な方法もご検討を

自宅保管は「すぐに書ける」点ですぐれていますが、紛失や改ざんの心配、そして亡くなったあとの検認という手間が残ります。

なかでも、もっとも安心で確実なのは公正証書遺言です。公証人が内容を確認しながら作るので無効になりにくく、原本は公証役場で保管されるため紛失や改ざんの心配もなく、検認も不要です。受け継ぐご家族の手続きも、いちばんスムーズです。法務局に預ける保管制度も、紛失や改ざんの心配がなく検認も不要で、確実な方法です。

まずは自宅保管で書いておき、落ち着いてから、公正証書など、より確実な方法に作り直す――という進め方もよいと思います。

(法務局に預ける方法については、別の記事「自筆の遺言書の書き方と、法務局への預け方」をご覧ください。)

書き方に不安があれば ― 無料添削をご利用ください

最後に、大切なことをお伝えします。自筆証書遺言は、自宅で保管する場合はもちろん、法務局に預ける場合であっても、その内容が法律上有効かどうかまでは、どこでも確認してもらえません。ご自分で気をつけるほかないのです。

そこで、「この書き方で大丈夫だろうか」と不安な方のために、当事務所では遺言書の無料添削を行っています。書いてはみたものの自信がない、という方は、どうぞお気軽にご利用ください。

お申し込み・ご相談は、当事務所のお問い合わせフォームから承っています。

お問い合わせ・無料添削のお申し込みはこちら

おわりに

この記事でお話ししたのは、あくまで一般的な仕組みです。ご家族の状況によって、いちばんよい方法は変わります。「うちの場合はどうだろう」「書いてみたが、これでよいのか不安だ」と思われたら、どうぞお気軽にご相談ください。


翔栄法務司法書士事務所(東京都世田谷区)

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。実際の手続きにあたっては、最新の取扱いをご確認のうえ、専門家にご相談ください。


山内扶美子

執筆者
山内扶美子 / 司法書士

37年の実績と経験であなたを扶(たす)けます。
得意なことは、『相続のご相談』『成年後見』『会社設立登記』です。翔栄法務司法書士事務所は、下北沢、代々木上原、笹塚、世田谷区、渋谷区の相続・成年後見・会社設立のサポートを中心に活動してまいりました。いまでは、全国対応のオンライン相談も積極的に受けております。

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