
ご家族が亡くなって、「遺言書があるはずなのに、どこにも見当たらない」。
そんなふうに、困っていらっしゃいませんか。
わたしは世田谷区で司法書士となって、30年を過ぎました。毎日のように相続のご相談を受け、遺言書の大切さを、日々お伝えしています。その中で、「あるはずの遺言書が見つからない」というお話も、たびたび耳にします。きょうは、遺言書の探し方と、見つけたあとにどうすればよいかを、種類ごとに、順を追ってお話しします。
目次
まず、どこを確かめるか ── 自宅・通知・公的機関
遺言者が亡くなったあと、ご家族がまず取るべきことは、おおまかにこの順番です。
- 自宅を探す。遺言書は、現金や通帳と同じように、大切にしまわれています。机やタンスの引き出し、大切な書類をまとめた場所、家の金庫などを探してください。
- 法務局からの通知が届いていないか確かめる。後述する法務局の保管制度を使っていた場合、ご家族に通知が届くことがあります。
- 公的機関で検索する。見当たらなければ、最寄りの公証役場で「公正証書遺言の検索」を、法務局で「遺言書保管事実証明書の請求(自筆証書遺言の検索)」を行い、公的機関に遺言書が残されていないかを調べます。これが、いちばん確実な手順です。
銀行の貸金庫は、相続人おひとりでは開けられないことがほとんどです。中に相続財産が入っている可能性が高いため、原則として相続人全員の関与が必要になります。貸金庫がありそうで、相続人全員の協力が得にくい状況であれば、早めに専門家にご相談ください。
遺言書には、大きく分けて3つの種類があります。それぞれ、探し方も、見つけたあとの手続きも違います。ひとつずつ、丁寧にご説明します。
① 自筆証書遺言の法務局保管制度 ── 法務局に預けてあるもの
自筆で書いた遺言書を、法務局に預けておく制度です。この制度を使っていれば、家庭裁判所での「検認」は不要です。ご家族の手間が、ぐっと少なくてすみます。確かめ方には、いくつかの入り口があります。
(ア) 法務局から通知が届いた場合
遺言者が生前に「死亡時の通知(指定者通知)」を希望していた場合、亡くなったあと、あらかじめ指定された方(最大3名まで)に、法務局から「遺言書が保管されています」という通知が届きます。この通知が届いたら、遺言書が確かに預けられている、ということです。
(イ) 通知がなくても、相続人が検索できます
通知がない場合でも、相続人などは、全国の法務局に「遺言書保管事実証明書」を請求することで、自分に関係する遺言書が預けられているかどうかを検索できます。
この請求は、遺言者が亡くなったあとに限ってできます。
(ウ) 保管されていたら ── 内容の確認と、手続き用の証明書
遺言書が保管されていた場合、法務局で内容を「閲覧」できます。そして、実際の相続手続き(不動産の名義変更や預貯金の解約など)を進めるには、「遺言書情報証明書」の交付を受けて、それを使います。
なお、相続人のどなたかが閲覧や証明書の交付を受けると、ほかのすべての相続人などにも、法務局から自動的に「遺言書が保管されていること」が通知されます(関係遺言書保管通知)。誰か一人が動けば、ほかの方にも伝わる仕組みです。
検索・請求のときに必要なもの(目安)
法務局で検索や証明書の請求をするときは、「遺言者が亡くなったこと」と「請求する方が相続人等であること」を示す書類が必要です。一般的には、次のようなものです。
- 遺言者の死亡が確認できる戸籍(除籍謄本など)
- 請求する方が相続人等であることがわかる戸籍(戸籍謄本など)
- 請求する方の住民票の写し
- 顔写真付きの本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 法務局所定の請求書、手数料分の収入印紙
※銀行の預金解約などで求められる「出生から死亡までの連続したすべての戸籍」までは、この検索の段階では通常不要です(死亡の記載がある戸籍と、請求者とのつながりがわかる戸籍があれば足ります)。「法定相続情報一覧図の写し」をすでにお持ちなら、戸籍一式の代わりに使えます。必要書類は法務局によって扱いが異なることもあるので、事前に管轄の法務局にご確認いただくと確実です。
② 公正証書遺言 ── 公証役場で作ったもの
公証人が関与して作る、もっとも確実な形の遺言書です。こちらも検認は不要です。手元に「正本」または「謄本」があれば、それを使って、そのまま相続手続きを始められます。
「作ったと聞いているけれど、見当たらない」とき
公正証書遺言には、法務局のような死後の通知制度がありません。そのため、相続人などが自分で、公証役場の「遺言検索システム」を使って調べる必要があります。
- 最寄りの公証役場へ。平成以降に作られた公正証書遺言はデータ化されているので、全国どこの公証役場からでも検索できます。検索自体は無料です。
※昭和に作られたものは、作成したその公証役場でしか検索できないことがあります。 - 見つかったら、内容を確認。原本の閲覧は1回 200円。
- 手続きには謄本を使う。謄本は1枚 250円で発行できます。実際の相続手続きには、この謄本(または手元の正本)を使います。
※公証役場での検索に必要な書類は、法務局と同じく、遺言者の死亡を示す戸籍やご自身の本人確認書類などが求められるのが一般的です。お出かけ前に、最寄りの公証役場にお問い合わせいただくと安心です。
③ 自宅で「自筆証書遺言」を見つけた場合(保管制度を使っていないもの)
タンスや金庫から、封のされた自筆証書遺言が出てきた――そんなときに、知っておいていただきたいことがあります。
でも――もし知らずに封を開けてしまっても、どうぞご安心ください。開けてしまったからといって、遺言書が無効になることはありません。大切なのは、そのあと、家庭裁判所での手続き(検認)を、必ず受けることです。検認を受けないと、その遺言書では相続の手続きを進めることができません。
家庭裁判所で「検認」を受けてください
遺言書を見つけた方、または保管していた方は、家庭裁判所に遺言書を提出し、相続人立ち会いのもとで、遺言書の状態や内容を確認する「検認」という手続きを受けます。開けてしまった場合も同じで、検認だけは、必ず受けてください。検認が済めば、その遺言書を使って、相続の手続きを進めることができます。むずかしく考えなくて大丈夫です。迷ったら、ご相談ください。
遺言書が複数見つかったら ── 日付がいちばん新しいものが優先されます
探していくうちに、遺言書が複数見つかることもあります。そのときは、種類を問わず、日付がいちばん新しいものが優先され、有効になります。
遺言書は、自筆証書遺言でも公正証書遺言でも、生前であれば何度でも書き直すことが認められています。内容の違う遺言書が複数あるときは、いちばん新しい日付のものが、その方の最新のお気持ちとして扱われます。
※法務局の保管制度を使っている方が、2通目以降を追加で預けたい場合は、最初に申請したのと同じ法務局(遺言書保管所)へ申請します。また、預けている遺言書の保管申請をいったん撤回して手元に返してもらい、書き直した新しい遺言書を改めて預け直すこともできます(撤回しても、遺言書そのものの効力が無効になるわけではありません)。
まとめ ── はじめてのことで、当然です
遺言書を探すのは、たいていの方にとって、はじめての経験です。種類によって、探す場所も、見つけたあとの手続きも違うので、戸惑って当然です。探しきれなくても、ご自分を責めないでください。
まずは自宅を探しつつ、法務局からの通知が届いていないかを確かめる。見当たらなければ、公証役場で公正証書遺言の検索を、法務局で遺言書保管事実証明書の請求を。この順で確かめていけば、たいていは見つかります。見つけたあとの手続きで迷ったとき、あるいは「どうしても見つからない」というときは、どうぞお気軽にご相談ください。30年、相続のお手伝いをしてきた経験で、いっしょに考えます。
