相続人のひとりが認知症ですすまない相続

山内扶美子
監修者 山内扶美子

「相続の手続きが、もう何年も止まったままになっている」

そのようなご相談は、実は珍しくありません。今回ご紹介するのは、相続人の中に認知症の方がいらっしゃり、さらにご兄弟の関係も良くなかったために、長年動かせずにいた相続が、成年後見の手続きから入ることで動き出し、無事に完了した事例です。

※お客様が特定されないよう、事実関係の一部を変更してご紹介しています。

ご相談前の状況:相続が止まっていた3つの理由

被相続人が亡くなられてから、すでに長い年月が経っていました。それでも遺産分割が進まなかったのには、理由が3つ重なっていたのです。

1. 相続人の中に、認知症で施設に入所されている方がいた

遺産分割協議は、相続人全員が参加して合意しなければ成立しません。しかし、認知症により判断能力が失われている方は、ご自身で協議に参加したり、書類に署名押印したりすることができないのです。ご家族が代わりに署名することもできません。この状態のままでは、何年経っても協議は成立しないのです。

2. ご兄弟の仲が良くなかった

相続人であるご兄弟の関係が疎遠で、誰かが音頭を取って話をまとめることが難しい状況でした。直接話し合おうとすると感情的な対立が先に立ってしまい、手続きの話まで進まないのです。

3. 止まったまま、時間だけが過ぎていた

放置の期間が長くなるほど、「今さらどこから手を付ければよいのか」という心理的なハードルも高くなります。実際、このご家族のもとには不動産会社や他の専門家から連絡が来たこともあったそうですが、気持ちが動かず、そのままになっていました。

転機:「相続」ではなく「成年後見」から始めた

当事務所へのご依頼は、相続の手続きそのものではなく、施設に入所されているお父様の成年後見の申立てから始まりました。

順番が大切なのです。認知症の相続人がいる場合、先に成年後見人を選任してもらわなければ、遺産分割協議を進めることができません。成年後見人は、ご本人(お父様)に代わって協議に参加し、ご本人の利益を守る立場で手続きを進める、家庭裁判所が選任する代理人です。

今回は、ご家族のご希望により当職を後見人候補者として申立書を作成し、家庭裁判所にそのとおり選任していただきました。

後見人が就任すると、止まっていた相続が動き出す

成年後見人が就任したことで、状況は大きく変わりました。

まず、遺産分割協議を法律上進められる状態になったこと。そしてもうひとつ大きかったのは、相続人の皆様が、お互いに直接やり取りをしなくてもよくなったことです。

後見人である司法書士が中立の立場で間に入り、各相続人の方とそれぞれ連絡を取りながら手続きを進めていくため、仲の良くないご兄弟が顔を合わせて話し合う必要がありません。感情的な対立を避けながら、手続きだけを一歩ずつ前に進めることができるのです。

時間はかかりましたが、長年止まっていた遺産分割は無事に成立し、不動産の相続登記まで完了しました。

お話し合いの席で出会ったご家族から、ご依頼をいただいた

実はこの事例には、もうひとつ印象的な経緯があります。

当事務所がこのご家族と出会ったのは、別のご家族の相続のお手伝いをしていたときのことでした。借地の権利関係を整理するために、事実関係のご確認とお手続きの流れのご説明にうかがったのです。争いごとの交渉ではなく、お互いの状況を確認し、今後のお手続きにご協力をお願いする場でした。

その席で、「実はうちも相続が止まっていて困っている。お願いしたい」とお声がけいただきました。それまで不動産会社や他の司法書士からの連絡には応じてこられなかったご家族が、です。

なお、こちらのご依頼をお受けしたのは、先のご家族のお手続きが終わったタイミングです。二つのご依頼はまったく別の、独立したお手続きであり、両者の利益が相反する関係にないことを確認したうえでお受けしています。

手続きの流れをわかりやすくご説明し、公平な姿勢でお話ししたことが、信頼につながったのだと思います。相続や後見のお手続きでは、「誰に頼むか」の前に「この人になら話せるか」が何より大切なのだと、あらためて感じた事例でした。

同じお悩みをお持ちの方へ

次のような状況に心当たりはありませんか。

  • 相続人の中に、認知症の方や施設に入所中の方がいる
  • 兄弟姉妹の仲が良くなく、相続の話し合いができない
  • 相続手続きが何年も止まったままになっている

このような場合、「話し合いを頑張る」のではなく、成年後見の申立てという法律上の手続きから入ることで、道が開けることがあります。

当事務所は、成年後見(公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員)と相続の両方を専門としており、後見の申立てから遺産分割、相続登記まで、ひとつの窓口で一貫してお手伝いすることができます。

「うちの場合はどうなのだろう」と思われた方は、まずは無料の診断ツールでご確認いただくか、お気軽にご相談ください。

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山内扶美子

執筆者
山内扶美子 / 司法書士

38年の実績と経験であなたを扶(たす)けます。
得意なことは、『相続のご相談』『成年後見』『会社設立登記』です。翔栄法務司法書士事務所は、下北沢、代々木上原、笹塚、世田谷区、渋谷区の相続・成年後見・会社設立のサポートを中心に活動してまいりました。いまでは、全国対応のオンライン相談も積極的に受けております。

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