
「登記はきちんと済ませたのに、あとから裁判所の通知が届いた」。
今回ご紹介するのは、設立したまま活動していなかった一般社団法人の事例です。別のご相談でお話をうかがっているうちに、当職が役員の任期切れに気づき、すぐに登記を行いました。そして約3か月後——代表者のご自宅に、裁判所から過料の通知が届いたのです。
「登記をしたのに、なぜ?」と思われるかもしれません。実はこれ、制度の仕組みどおりの出来事です。今回は、実際に届いた決定書もお見せしながら、その顛末をご紹介します。
※お客様が特定されないよう、事実関係の一部を変更してご紹介しています。
きっかけ:別のご相談の中で、任期切れに気づいた
このお客様は、任期の件でご相談に来られたのではありません。まったく別の件でお話をうかがっている中で、設立したまま動かしていない一般社団法人をお持ちであることがわかり、当職が「役員の任期、切れていませんか」とお尋ねしたのがきっかけでした。
調べてみると、任期が切れてから、まもなく2年になろうかというところでした。ご本人はまったくご存じありませんでした。責められることではありません。ここに、一般社団法人ならではの落とし穴があるのです。
一般社団法人の理事の任期は「2年」で、伸ばせない
株式会社の役員任期は、定款の定めによって最長10年まで伸ばすことができます。ところが一般社団法人の理事の任期は約2年(選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで)と法律で決まっており、これより長くすることはできません。
つまり、活動していてもいなくても、2年ごとに役員を選び直して登記する必要があるのです。同じ方が続ける場合でも「重任」の登記が要ります。「動かしていないのだから何もしなくてよい」とはならない——ここが見落とされがちな点です。
すぐに登記。そして「過料が来ます」と先にお伝えした
気づいた時点で、当事務所ですぐに重任の登記を行いました。役員の変更登記は本来、変更から2週間以内に申請しなければならないもので、期限は大きく過ぎていましたが、遅れていても、気づいた時点ですぐ登記する——これが常に正解です。
そして登記と同時に、お客様に先にお伝えしたことがあります。
「数か月すると、裁判所の名前で、代表者のご自宅に過料の通知が届きます。ご家族が先に受け取られると、裁判所からの封書ですから、たいへん驚かれます。奥様には今のうちに伝えておいてください」
過料の通知は、法人の事務所ではなく代表者個人のご自宅へ、裁判所の名前で届きます。事情を知らないご家族が最初に手に取ることが多く、「裁判所から夫に何か来た」と青ざめてしまわれるのです。長年この仕事をしていると、通知そのものより、この「ご家族の驚き」の方が心配になります。
約3か月後、予告どおり通知が届いた
登記からおよそ3か月後、予告どおり、裁判所から過料決定の通知が届きました。事前にご説明していたので、お客様もご家族も、落ち着いて受け取ることができました。

実際に届いた過料決定の謄本です(当事者が特定されないよう加工しています)。主文は「被審人を過料金3万円に処する」。理由の欄には、登記すべき期限から登記の日まで「怠った」ことが、日付入りで淡々と記されています。
なぜ登記を済ませた後から通知が来るのか。仕組みはこうです。期限を過ぎた登記を申請すると、登記の記録から「本来の期限からどれだけ遅れたか」が法務局にわかります。その情報が裁判所に通知され、裁判所が遅れた事実に対して過料を科すかどうかを判断します。過料は「登記をしなかったこと」ではなく「登記が遅れたこと」への制裁なので、登記を済ませてしばらく経ってから届くのです。
過料について、知っておいていただきたい3つのこと
一つ目、過料は刑罰ではありません。罰金や科料と違い、前科にはなりません。行政上の秩序を保つための金銭的な負担です。
二つ目、金額は遅れた期間などの事情により裁判所が決めます。今回は2年近い遅れで3万円でした。通知に従って納付すれば、それで手続きは終わります。
三つ目、そして一番大切なことですが、「過料が怖いから登記しないでおく」は最悪の選択です。放置すればするほど遅れは積み重なりますし、一般社団法人は最後の登記から5年放置されると、休眠法人として解散したものとみなされる(みなし解散)制度があります。株式会社の12年に比べて、ずっと短いのです。
その後:任期を「覚えておく問題」にしない
今回のお客様とは、その後、役員任期の管理契約を結んでいただきました。次の任期満了の時期は当事務所が把握し、期限が近づいたらこちらからお声がけして、期限内に登記を済ませる——お客様は何も覚えておく必要がありません。当事務所ではこれを「役員任期しっかり管理」(年額10,000円)としてご提供しています(報酬等の目安はこちら)。
2年ごとに必ずやってくる登記を、記憶に頼って管理するのは現実的ではありません。「忘れない仕組み」を持てば、過料の心配はなくなるのです。
また、今後も活動の予定がないのであれば、解散・清算という選択肢もあります。法人を持ち続ける限り登記の義務は続きますので、「持ち続けるのか、きちんとたたむのか」を一度立ち止まって考えることも、大切な任期管理の一つです。
あなたの体験も、お聞かせください
過料の通知を受け取ったとき、どう感じられましたか。裁判所からの封書に驚いた、ご家族が先に受け取って慌てた、金額を見て少しほっとした——同じ経験をされた方の声は、これから通知を受け取るどなたかの安心につながります。
「うちにはこんな通知が来た」「こう対応した」という体験を、お問い合わせフォームからお寄せいただけましたら幸いです。お名前が公開されることはありません。ご了承をいただいたものに限り、個人や法人が特定されない形で、今後の記事の中でご紹介させていただくことがあります。もちろん、対応にお困りの場合のご相談も歓迎です。
同じお悩みをお持ちの方へ
次のような状況に心当たりはありませんか。
- 一般社団法人・一般財団法人を設立したが、活動しないまま時間が経っている
- 役員の任期がいつ切れるのか、把握していない
- 裁判所から過料の通知が届いて、どうすればよいかわからない
任期が切れたままの登記は、何年分たまっていても今から手続きできます。過料の通知が届いた方も、慌てる必要はありません。仕組みと対応をご説明しますので、お気軽にご相談ください。
まずはご自身の法人の任期を確認したい方は、無料のチェックツールをご利用ください。
▶ 法人役員任期チェックツール(無料)
▶ 一般社団法人・一般財団法人の役員登記を忘れていたら ── 懈怠と過料の解説記事
▶ みなし解散 ── 法務局から通知が届いたら、すぐにやるべきこと
